大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和61年(ワ)1585号 判決

原告

松原裕

被告

日産火災海上保険株式会社

主文

一  被告は、原告に対し、金三二八万五〇〇〇円及びこれに対する昭和六〇年四月一六日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、金八一〇万円及びこれに対する昭和六〇年四月一六日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  保険契約の締結

原告は、被告(株式会社)と、次に記載の保険契約を締結した。

(一) 自動車保険契約

(1) 証券番号 五八〇八〇―四八一三一三七

(2) 契約日 昭和五九年四月二五日

(3) 保険期間 右同日から同六〇年四月二五日

(4) 被保険自動車 名古屋五四め二五四六号(以下、「原告車」という。)

(5) 保険金額 対人賠償 一億円

自損事故 一四〇〇万円

無保険車傷害 一億円

対物賠償 三〇〇万円

搭乗者傷害 一〇〇〇万円

(二) 積立フアミリー交通傷害保険契約(一)

(1) 証券番号 五四五八〇一〇四五―四

(2) 契約日 昭和五九年五月一八日

(3) 保険期間 右同日から同六四年五月一八日

(4) 被保険者 原告

(5) 保険金額 五〇〇〇万円

(6) 入院保険金額 一日一万五〇〇〇円

(三) 積立フアミリー交通傷害保険契約(二)

(1) 証券番号 五四五八〇一〇四七―八

(2) 契約日 昭和五九年五月一八日

(3) 保険期間 右同日から同六四年五月一八日

(4) 被保険者 原告

(5) 保険金額 五〇〇〇万円

(6) 入院保険金額 一日一万五〇〇〇円

2  事故の発生

(一) 日時 昭和五九年一〇月一八日午前七時五〇分ころ

(二) 場所 名古屋市北区上飯田北町四丁目七五番地の一先路上

(三) 態様 原告が原告車を運転して右道路上を北進中、道路左側から飛び出した子供を避けようとしてハンドル操作を誤り、折から対向して進行してきた訴外奥松浩三運転の自動車(名古屋三三ぬ一七二七号)と正面衝突をした(以下、「本件事故」という。)。

3  受傷及び治療経過

原告は、本件事故により、頭部外傷、頸部挫傷等の傷害を受け、名古屋市西区所在のはやし外科において、昭和五九年一〇月一八日から同六〇年四月二〇日まで一八五日間入院治療を受けた。

4  保険契約の内容

(一) 自動車保険契約の保険約款第四章搭乗者傷害条項には、次に記載の定めがある。

第一条第一項

当会社は、保険証券記載の自動車(原動機付自転車を含みます。以下「被保険自動車」といいます。)の正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の者(以下「被保険者」といいます。)が被保険自動車の運行に起因する急激かつ偶然な外来の事故により身体の傷害……を被つたときは、この搭乗者傷害条項および一般条項に従い、保険金……を支払います。

第六条第一項

当会社は、被保険者が第一条……の傷害を被り、その直接の結果として、生活機能または業務能力の滅失または減少をきたし、かつ、医師の治療を要したときは、平常の生活または業務に従事することができる程度になおつた日までの治療日数に対し、次の各号に規定する金額を医療保険金として被保険者に支払います。

(1) 病院または診療所に入院した治療日数に対しては、その入院日数一日につき保険金額の一〇〇〇分の一・五。ただし、一万五〇〇〇円を限度とします。

同条第二項

前項の医療保険金の支払いは、いかなる場合においても、被害の日から一八〇日をもつて限度とします。

(二) 積立フアミリー交通傷害保険契約(以下、「積立フアミリー契約」という。)の保険約款には、次に記載の定めがある。

第一条

当会社は、被保険者が、……その身体に被つた次の傷害に対して、この約款に従い保険金(死亡保険金、後遺障害保険金、入院保険金……をいいます。)を支払います。

(1) ……または運行中の交通乗用具の衝突、接触……等の交通事故によつて被つた傷害

第一五条第一項

当会社は、被保険者が第一条……の傷害を被り、その直接の結果として、生活機能または業務能力の滅失をきたし、かつ、医師の治療を受けた場合は、その状態にある期間に対し、事故の日から一八〇日を限度として、一日につき、保険証券に記載されたその被保険者の入院保険金日額を入院保険金としてその被保険者に支払います。

同条第二項

前項にいう「生活機能または業務能力の滅失」とは、次の(1)または……に掲げる状態をいいます。

(1) 医師の指示に基づき病院または診療所に入院し、かつ、平常の業務に従事できない状態

5  原告は、前記のとおり、本件事故により受傷し、生活機能又は業務能力の滅失又は減少をきたし、かつ、医師の指示に基づき入院治療を受けたので、前項記載の各約款により、被告に対し、次の保険金を請求する権利を有する。

(一) 自動車保険契約搭乗者傷害条項により、入院一日につき、保険金額一〇〇〇万円の一〇〇〇分の一・五にあたる一万五〇〇〇円の一八〇日分、合計二七〇万円。

(二) 積立フアミリー契約により、入院一日につき一万五〇〇〇円の一八〇日分、合計二七〇万円。右を二口契約しているため、合計五四〇万円。

よつて、原告は、被告に対し、保険金合計八一〇万円及びこれに対する、入院治療を受け始めた日から一八〇日を経過した日の翌日である昭和六〇年四月一六日以降完済まで、商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は不知。

3  同3の事実は不知。

4  同4のうち、(一)の「第一条第一項」については認めるが、「第六条第一項」、「同条第二項」については否認する。(二)は認める。

5  同5のうち、受傷及び治療経過は不知。その余は否認する。

三  抗弁

1  免責

(一) 原告と被告とが締結した自動車保険契約の保険約款第四章搭乗者傷害条項には、次に記載の定めがある。

第二条第一項

当会社は、次の傷害については、保険金を支払いません。

(1) 被保険者の故意によつて、その本人について生じた傷害

((2)以下、省略)

(二) 原告と被告とが締結した積立フアミリー契約の保険約款第三章保険金を支払わない場合には、次に記載の定めがある。

第一一条第一項

当会社は、次の事由によつて生じた傷害に対しては、保険金を支払いません。

(1) 被保険者の故意または重大な過失。

ただし、保険金を支払わないのはその被保険者の被つた傷害に限ります。

((2)以下、省略)

(三) 原告が主張する事故は、いわゆるねつ造事故であり、原告の故意によつて発生したものである。

よつて、被告は、原告に対し、保険金支払義務を負わない。

2  契約解除

(一) 原告と被告とが締結した積立フアミリー契約の保険約款第五章保険契約者または被保険者の義務、第六章保険契約の無効および解除には、次に記載の定めがある。

第一九条第一項

保険契約締結の当時、保険契約者、被保険者またはこれらの者の代理人が故意または重大な過失によつて、保険契約申込書の記載事項について、当会社に知つている事実を告げずまたは不実のことを告げたときは、当会社は、書面により保険証券記載の保険契約者の住所(第二二条(保険契約者の住所変更)第一項の通知があつた場合はその住所または通知先)にあてて発する通知をもつて保険契約を解除することができます。

同条第四項

第一項の解除が傷害の生じた後になされた場合でも、第二五条(保険契約解除の効力)の規定にかかわらず、当会社は保険金を支払いません。もし、すでに保険金を支払つていたときは、当会社は、その返還を請求することができます。

第二五条

保険契約の解除は、将来に向つてのみその効力を生じます。

(二) しかるに、原告は、昭和五九年五月一八日の本件各積立フアミリー契約締結の当時、故意または重大な過失によつて、原告が昭和五八年一一月二八日、豊明市栄町寺前二五番地先路上における交通事故により右前腕左股間部挫傷、右膝部挫創、右膝蓋骨折及び関節血腫等の傷害を受け、同日から同年一二月二日まで中島病院において、同日から翌五九年二月八日まで尾陽病院において各入院治療を、同年二月九日から同年五月一八日まで右尾陽病院において通院治療をそれぞれ受けている事実を、被告に対して告げなかつた。

(三) そこで、被告は、昭和六〇年六月二六日、内容証明郵便により保険証券記載の原告の住所にあてて本件各積立フアミリー契約を解除する旨の意思表示をし、右内容証明郵便は同年七月二日に原告方に配達された。

よつて、被告は、原告に対し、保険金支払義務を負わない。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1のうち、(一)及び(二)の事実は認め、(三)の事実は否認する。

2  抗弁2のうち、(一)の事実は認める。(二)のうち、尾陽病院の入通院関係は認め、「故意又は重大な過失によつて被告に告げなかつた」との点は否認し、その余の事実は不知。

原告は、本件各積立フアミリー契約を、被告と損害保険代理店委託契約を締結している訴外名古屋ニツサンモーター株式会社の社員田中武雄(以下、「田中」という。)の勧誘により締結したが、原告は、田中に対し、契約締結前に「以前運送屋の仕事中に事故があり、現在も治療中である。」との事実を告げた。ところが、田中は、積立フアミリー契約の契約申込書に告知欄があることを知らず、まして原告の告げた右事実が告知事項となつていることも知らなかつたため、告知欄に記載しなかつたものである。したがつて、原告に故意又は重過失はない。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1(保険契約の締結)の事実は当事者間に争いがない。

二  請求原因2(事故の発生)について

成立に争いのない甲第五号証、第六号証、第八号証の一ないし六、第九号証の一ないし三、第一〇号証、原告本人尋問(第一回)の結果により真正に成立したものと認められる甲第一一号証及び同尋問の結果によれば、請求原因2の事実が認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

三  請求原因3(受傷及び治療経過)について

成立に争いのない甲第四号証、乙第一二号証及び第一三号証によれば、原告は、本件事故により、頭部外傷、顔面打撲兼挫創、後頭部打撲性皮下血腫、頸部挫傷、両膝関節部打撲の傷害を受けたこと、名古屋市西区所在のはやし外科において、昭和五九年一〇月一八日から同六〇年四月二〇日まで一八五日間入院治療を受けたことが認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない(なお、本件事故と入院治療の相当因果関係の有無については、後に判断する。)。

四  請求原因4(保険契約の内容)について

1(一)  自動車保険契約の保険約款第四章搭乗者傷害条項第一条第一項の規定が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。

(二)  成立に争いのない甲第一号証によれば、本件自動車保険は自家用自動車保険であることが認められるところ、契約締結当時の搭乗者傷害条項第六条第一項及び第二項の規定が原告主張のとおりであることは、当裁判所に顕著である。

2  積立フアミリー契約の保険約款第一条、第一五条第一項及び第二項の規定が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。

五  免責の抗弁について

1  自動車保険契約の保険約款第四章搭乗者傷害条項第二条第一項の規定及び積立フアミリー契約の保険約款第三章第一一条第一項の規定が被告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。

2  被告は、本件事故がいわゆるねつ造事故であり、原告の故意により発生したものであるから、保険金支払義務を負わない旨主張する。

しかし、前掲甲第六号証、第八号証の一ないし六、第九号証の一ないし三、第一〇号証、第一一号証、証人奥松浩三の証言及び原告本人尋問(第一回)の結果によれば、原告は、本件事故現場に差しかかつた際、前方道路左側に子供の頭が見えたので、飛び出してくるといけないと思い、右にハンドルを切つたこと、そのとき前方から対向車が来たので、これを避けるため左にハンドルを切つたところ、スピードが多少出ていたうえにハンドルを左に切りすぎたため、道路左端に設置された縁石にタイヤを接触させたこと、次いで前方の駐車車両を避けようとして右にハンドルを切つたところ、対向して進行してきた奥松浩三運転の自動車と衝突したことが認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

ところで、例えば、全く目撃者のいない場所での自損事故とか、走行中にわざと急ブレーキをかけて後続車の追突を誘発した事故などの場合、ねつ造事故を疑う余地がないわけでもないが、本件の場合、右認定の事故態様につき特に不自然な点は見出しえないし、他に本件事故が原告の故意により発生したものと認めるに足りる証拠もない。よつて、被告の免責の抗弁は理由がない。

六  契約解除の抗弁について

1  積立フアミリー契約の保険約款第五章及び第六章の中の第一九条第一項、第四項及び第二五条の規定が被告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。

2  原告が昭和五八年一一月二八日の交通事故による傷害の治療のため、同年一二月二日から同五九年二月八日まで尾陽病院に入院し、同年二月九日から同年五月一八日まで同病院に通院していたことは、当事者間に争いがない。

3  被告は、原告が故意又は重大な過失によつて、右尾陽病院等の入通院治療の事実を被告に対し告知しなかつた旨主張する。

なるほど、成立に争いのない乙第二号証、第三号証及び証人田中の証言によれば、本件各積立フアミリー契約の申込書には、「過去三ケ年間に傷害保険金または賠償責任保険金の請求または受領の有無」、「他の傷害保険あるいは賠償責任保険の有無」の告知欄があること、申込人欄の住所氏名は原告自身が記入し、押印したことが認められるから、原告が右告知欄があることを知らなかつたとは考えられない。

しかし、証人田中の証言及び原告本人尋問(第一回)の結果によれば、原告は、本件各積立フアミリー契約を、被告と損害保険代理店委託契約を締結している訴外ニツサンモーター株式会社の社員田中の勧誘により締結したこと、原告は、右締結に際し、田中に対し、前に交通事故をやつたことがあり、怪我の治療のため今も通院している旨述べたこと、しかるに、田中は、積立ファミリー契約についてはあまり勉強しておらず、原告の述べたことが告知欄に記載しなければならない事項か否かも理解しておらず、単に原告に住所氏名を記載させ、押印させたのみで、告知欄には何らの記載もしなかつたことが認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

右の事実関係に照らすと、原告が故意又は重大な過失によつて前記尾陽病院等の入通院治療の事実を被告に告げなかつたものとは認め難く、他にこれを認めるに足りる証拠もない。よつて、その余の判断をするまでもなく、被告の契約解除の抗弁は理由がない。

七  そこで、保険金請求権の存否について判断する。

1  原告が本件事故により、頭部外傷、頸部挫傷等の傷害を負つたこと、はやし外科において一八五日間入院治療を受けたことは、前記三認定のとおりである。

2  本件事故と右入院治療の相当因果関係の有無について検討する。

(一)  前掲乙第一二号証、第一三号証、証人林釗の証言によれば、以下の事実を認めることができる。

原告は、昭和五九年一〇月一八日はやし外科に入院した際は、頭部外傷、顔面打撲症兼挫創、後頭部打撲性皮下血腫、頸部挫傷、両膝関節部打撲症の傷病名で治療を開始した。その後、同年一〇月中に感冒、不眠症にかかつたほか同年一一月二二日以降、後頭部、頸部、胸部、右肩胛部等に蕁麻疹が多発した。また、同年一二月六日以降肝炎の傷病名で、さらに、同年一二月二五日以降高血圧症兼心臓肥大症の傷病名でそれぞれ治療を開始した。

はやし外科の医師林釗は、本件事故による頭部、頸部等の傷害の治療については、昭和五九年末ころには退院して通院に切り替えてもよいと考え、その旨原告に話したこともあつた。しかし、原告には、右のように肝炎、高血圧、心臓肥大などの私病があり、原告が通院よりも入院を希望したこともあつて、はやし外科では、昭和六〇年一月以降も入院を継続させた。

(二)  原告は、本人尋問(第二回)中で、本件事故以前には、蕁麻疹がよく出たとか、肝臓、高血圧、心臓に関して医者にかかつて治療を受けたことはない旨供述する。

しかし、原告が肝臓、高血圧、心臓に関して自覚症状がなかつたとしても、はやし外科における入院中にそれが発見されたということも考えうるし、他方、本件事故によつて右各傷病が発現したと認めうる的確な証拠もない。

(三)  また、証人林釗の証言によれば、昭和六〇年一月以降も本件事故による傷害の治療は、同年四月二六日の退院時まで継続されていたことが認められるが、前記のとおり、林医師の判断によれば、同年一月以降については、通院治療で足りるというのであるから、同年一月以降の入院治療については、本件事故との相当因果関係を認めることはできない。

そして、前掲乙第一二号証及び証人林釗の証言によれば、原告は、昭和五九年一二月三〇日及び三一日は年末のため一旦退院していることが認められるので、結局、本件事故と相当因果関係のある入院治療期間は、昭和五九年一〇月一八日から同年一二月二九日までの七三日間となる。

(四)  なお、成立に争いのない乙第一一号証によれば、被告から本件に関し医学鑑定の依頼を受けた山形大学法医学講座教授鈴木庸夫は、原告の入院の必要性は、高々一~二か月しか認められない旨の意見を述べていることが認められる。

しかし、入院の必要性については、直接原告を診断した林医師の前記判断が特に不合理であると認めるに足りる証拠はなく、また、右鈴木庸夫の意見も林医師の判断に大きく抵触するものではないから、乙第一一号証をそのまま採用することはできない。

3(一)  本件自動車保険契約の搭乗者傷害保険金額は一〇〇〇万円であり、保険約款搭乗者傷害条項第六条第一項によれば、医療保険金は、入院日数一日につき保険金額の一〇〇〇分の一・五、ただし、一万五〇〇〇円を限度とすると定められていることは、前記一及び四記載のとおりである。

(二)  本件積立フアミリー契約(一)及び(二)の入院保険金額がそれぞれ一日につき一万五〇〇〇円と定められていることは、前記一記載のとおりである。

(三)  また、原告の傷害の内容、程度、入院の経緯に照らし、原告が生活機能又は業務能力の滅失又は減少をきたし、かつ、医師の指示に基づき入院治療を受けたことは明らかである。

(四)  したがつて、原告は、被告に対し、本件自動車保険契約に基づき、入院一日につき一万五〇〇〇円、本件積立フアミリー契約(一)及び(二)に基づき、入院一日につきそれぞれ一万五〇〇〇円、七三日分合計三二八万五〇〇〇円の保険金請求権を有することとなる。

八  結論

以上の次第で、原告の請求は、右金三二八万五〇〇〇円及びこれに対する昭和六〇年四月一六日以降完済まで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 芝田俊文)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例